「看板ドック」誕生秘話④ 初受注で見上げた空
看板が落下する。
店舗にとっても、企業にとっても、また施工業者にとっても、万が一にもあってはならない事故です。
しかし、その「万が一」が起きてしまうのが現実の非情さ。
企業はもちろん点検をしています。
しかし、目視の点検では、実施する会社や職人さんによって評価にばらつきが出ます。
去年はマルだったのに、一年でバツがつく。
点検しているのに安心はできない状況です。
企業の店舗担当者としては直したいけれど、評価が定まっていないと会社で稟議が下りません。
しかし、いざ事故が起きたら担当者のせいにされるでしょう。
八方塞がりとはこのこと。
不安でしかたないまま日々を過ごしているのです。
そんな問題を解決するための基準づくりが必要です。
しかし、看板業者は自らやろうとはしていません。
看板業者は看板を作って取り付けるまでが仕事。
安全は企業や店舗まかせでした。
快適創造企業レガーロがそこにメスを入れて作ったのが「看板ドック」です。
店舗担当者がいちばん欲しいものを作ること。
それは「看板で悲しむ人を0にする」という我が社の大義名分に叶うものでもあります。
ひいては「看板業界を安全第一の業界にする」という高倉社長の志を果たすことにもつながるでしょう。
ここまでのブログに書いたような苦労を重ねて作り上げた「看板ドック」でしたが、発売当初、売れなくてまた苦労したのは、お客様が買ったらいいかどうか判断できない、ということが理由でした。
看板の安全性を判断するための基準を、買うべきかどうか判断する基準が、お客様にまだなかった、ということです。
おこがましい表現になりますが、お客様の啓蒙が必要でした。
買うかどうかの判断の基準をお客様自身が持っていないと、業者にいいようにいわれて、いいように買わされてしまいます。
そこに危機感を持っていただきたかった。
我が社の「看板ドック」がよい製品であるかどうか以前の問題です。
努力の甲斐あって、お客様の言葉が少しずつ変わってきました。
しかしそれだけではまだ動かない。
啓蒙より必要なのが外圧です。
何度もいうようですが、企業には稟議というものがあり、それが下りないとなに一つ動きません。
そして稟議にもっとも影響を及ぼすのは外圧である、ということです。
おりしも、地震や台風の被害を経て、行政からの取り締まりが厳しくなってきました。
安全対策をやったほうがいい、から、やらなくてはいけない、のレベルに変わったのです。
その流れのなかで、ついに「看板ドック」の初受注をいただきました。
数十の店舗を持つ会社様の看板の検査です。
最初の店舗の検査に私も立ち会いました。
非破壊検査の機器を携えて高いところまで上がっていく職人さんたちを見上げて、
「ああ、決まったんだな」
と、初めて実感しました。
0を1にする、と口でいうのは簡単なことですが、実際には大きなエネルギーと長い時間を必要とします。
入社して0だった私が、同じく0だった「看板ドック」を手がけ、こうして1にすることができました。
既成概念や「これはこうでないと」という思い込みにとらわれなくなったのがいちばんの収穫だったと思います。
うまくいかない状況を前にしても、それならこういう発想をすればいいんじゃないか、と考えを切り替えられる。
そんな自分に手応えと自信を感じています。